今日のおおしお市民農園




2012年08月30日(木): もうすぐ、8月も終わりです。
暑さに負けて引き篭もり中、アイヌ語地名の第二弾です。

何か、出来の悪い子供時代の、夏休みの宿題発表を思い出します。



チトカニウシ山 (北見峠から、 2011/04/10 撮影、涼しさが届けば幸いです。)


アイヌ語地名:(ウシ: ush)


今回は、北海道の地名で、頻繁に登場する「牛:うし」(ウシ: ush)の解説です。

美馬牛:美瑛町
岐登牛山:東川町
伊香牛:当麻町

けっして、牛の放牧場が在ったなどとは思わないで下さい。

アイヌ語地名を漢字で表記している場合の殆んどは、意味ではなく、
音を表しています。(勿論、意味を表す場合も在りますが、少ないです。)

(ウシ : ush)の話題に入る前に、(ウン : un)について触れて置きます。

近文(ちかぶみ):旭川市の中心部西、鷹栖インター近くの場所です。
 (チカプ・ニ: chikap-un-i) 鳥の・居る・処 の意です。
 鷹が多く居た場所だそうです。 現在の鷹栖町はそれを意訳した地名です。

双雲別川(そーうんべつ川):層雲峡手前、清川からニセイカウシュッペ山に入る川です。
 (ソー・ウン・ベツ: so-un-pet) 滝の・ある・川 の意です。
 この川を、数年前の4月、遡行したことがありますが、顕著な瀑布は在りません。
 多分、白波の急流を so : 滝と呼んだのでせう。

上記に見るように、(un : は、「ある、居る」という意味の動詞です。)


さて、”(ウシ : ush)ですが(ウン : un)の複数形のように考えられていて、
普通は「たくさんある」「群生している」等に訳されます。
また、動詞の後に付くと、その動詞の動作が何度も繰り返される意を表します。”
(山田秀三著「アイヌ語地名の研究、1」p.22 より)

前置きはこの程度にして、実際の地名を見てみませう。

美馬牛(びばうし):美瑛町
 (ピパ・ウシ: pipa-ush-i) カラス貝・多き・処 の意です。
  美瑛の丘を観光すれば、おや?と気付く地名です。

岐登牛山(きとうし山):東川町、スキー場と、キャンプ場の在る山です。
 (キト・ウシ・ヌプリ: kito-ush-nupuri) 行者ニンニク・群生する・山 の意です。
 今年の5月中旬に訪れた時、行者ニンニクではなく
 カタクリの群落が迎えてくれました。

伊香牛(いかうし):当麻町、国道39号が、石狩川を渡る場所です。
 (イ・イカ・ウシ: i-ika-ush-i) それを・越え・つけている・処 の意。
 アイヌ時代も、(石狩川の)渡渉を・何時もしている・処だったのでせう。

妹背牛(もせうし):妹背牛町、なかなか読めない地名でした。普通なら(いもせうし)でせう。
 (モセ・ウシ: mose-ush) イラクサ・群生する の意と、
  草刈を・何時もする の意があり、伝承が無く、判らないそうです。(山田「北海道の地名」より)
  ここの温泉「ペペル」は、公共温泉ながら”良”と評価いたしませう。

蘭越(らんこし):蘭越町(ニセコの南西の町、ニセコ近くの温泉はお勧めです。)
 (ランコ・ウシ: ranko-ush-i) 桂・群生する・処 の意。
  牛の表記を使わないまでも、(ウシ: ush)を指す地名は多いです。

熊石(くまいし):八雲町の日本海側です。近くの見市温泉(未入浴)は、お勧めだそうです。
 (クマ・ウシ: kuma-ush-i) 物乾し・多くある・処 の意。
  クマ(kuma) は、物干し棹に魚を掛けて干したものです。好漁場を示しています。
 (ウシ: ush) を「石」と表記した例で、他にも散見されます。

羅臼(らうす):知床半島です。訪れば、温泉・熊の湯は外せません。
 (ラ・ウシ: ra-ush-i) 低いところ・にある・もの(川) の意。
  ラ(ra) には、狩猟で出る「臓腑」の意もあるようです。今も漁業中心の町ですから...。
 (ウシ: ush) を「臼」と表記した例で、他にも散見されます。

チトカニウシ山:北見峠からアプローチする、山スキー向きの山です。麓の白滝温泉復活を期待します...!
 (チ・トゥカン・ニ・ウシ: chi-tukan-ni-ush-i): 我等・(矢を)射る・木・がある・処の意。
 そこを通る人たちが矢を放って運を占った大木が在った処の名で、それがこの山の名になった。
 このケースは、(ニ: ni)木の意が含まれるため、理解が少し難しいですが、下記を参考にして下さい。

 参考:基北川(きほく川)は、下記・牛朱別川に流入する川ですが。
 アイヌ語では、( chi-tukan-ush-nai) 我等・(矢を)射る・いつもする・川の意です。


最後に、先頭に「牛」が付く場合は、上記の用法とは別ものです。(動詞[ush]は先頭に来ない...?)

牛朱別川(うししゅべつ川): 旭川市街の北部で、石狩川に流入する川。
 (ウシシュ・ベツ: ushish-pet) 鹿の蹄跡(多き)・川 の意です。


なお、(ush-i)[群生する・処]の語形ですが、アイヌ語<地名>では、動詞(ush)で終わる事は出来ず、
( -i: 処 等)を付けて名詞形で終わる...? (地名ですから、名詞形にするのが普通ですよね。)

上記、「妹背牛」も本来、( mose-ush-i )と記述すべきでは、と思うのですが?
(PS. 「アイヌ語地名の研究、1」p.23 では、( mose-ush-i )と表記しています。)


PS2. アイヌ語では、動詞、形容詞の後に"-i" をつけて名詞形を作る。
 意味は「もの、者。処」である。(山田『アイヌ語地名の研究 1』p.90 より)
 なお、"-p, -pe" も同様である。

 月寒(チ・キサ・プ: chi-kisa-p) 我等・(発火のため)こすった・処 (母音の後は、 -p)
 留辺蘂( ル・ぺシ・ぺ: ru-pesh-pe ) 道・下る・もの(沢):峠道の沢 (子音の後は、 -pe)
 ("-i"と"-p, -pe"の使い分けは、今後の課題です。今は闇の中...。)


PS3. アイヌ語・三大地名(語尾)
      永田方正『北海道蝦夷語地名解』の6,000語強の中に占める割合。
   (山田『アイヌ語地名の研究 1』 pp.113-114 より。[09/06 追加])
 
   1. ナイ(nai : 川)      例:稚内  1,416件 23%
   2. ペツ(pet : 川)      例:芦別    629件 10%
   3. ウシ(ush : たくさんある) 例:美馬牛  528件  9%



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